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    ゾンビだって走んだよ
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快適を犠牲にする淡い可能性



いろいろ検証した結果、アンダーウェアはラクダのももひきが一番暖かく、そしてなにより肌触りがよい。

ハイテク素材もこの肌触りという点ではラクダの足元にも及ばない。

むろん本物のラクダは高価なのでソレではなく、昔からニッポンのお父さんが愛用しているアレだ。

ただ、機能的に優れていると分かっていても、人間複雑にできているもので、躊躇せずにはけるかというとそうではない。

別に、誰かに見られるわけでもなく、ましてや女性の目の前でベルトをカチャカチャさせるチャンスも無いだろうに、それでも「やめとけやめとけ」と耳元で誰かが囁くのはなぜだろうか。

「見えない部分にまでこだわる」なんてのは本質を覆う言葉のマジックでしかない。

ということは

「もしかすると今日劇的なロマンスがあるかもしれない」

と淡い可能性を信じている可愛い自分がいるのかもしれない。

だとしたら、俺もまだまだすてたもんじゃないな。

「僅かな可能性に賭ける」というのは男の生き方として正しい。


と、今日の朝、手に取ったラクダのももひきをしばらく見つめた後、俺はそっと箪笥に戻した。

もちろん劇的なロマンスなんてこれぽっちも無かった。
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